トップカイザーサウンドオーディオクリニックの旅ディナのフラッグシップモデルC4の実力たるやいかに

ディナのフラッグシップモデルC4の実力たるやいかに



 取引先のお店さんからの依頼


取引先のお店さんからの依頼でクリニックにお伺いしたT.O様のシステムは大変シンプルでした。ディナウディオのフラッグシップモデルC4に、CHORDのプリメインアンプ、それにCDプレーヤーはちょっと古いメリディアンです。



 シンプルなシステム構成


 このスピーカーは過去に一度セッティングの経験があります。しかし、その時はアクセサリーの多用が音を複雑にし、何がどう音に関係しているのか判断しにくい状態でした。ですからC4本来の素の姿であり、そのポテンシャルは分からずじまいなところがありました。

 それに比べると今日のコンディションは至ってシンプルですので、スピーカーの持つ本当の実力を引き出すには適しています。


 部屋の間仕切りが邪魔をしていた


 あまりにも部屋が変則的なので、長所よりも短所の面ばかりが出ないかそれが心配です。ですから部屋に通された瞬間からいつもの自信ははるか彼方に飛んで行き、果たして良い結果を出せるのかどうかいつもとは違って心配からのスタートとなりました。

 16〜20畳ほどの洋間ですが、天井からは数十センチの垂れ壁があり、間仕切りが可能です。その戸袋部分が右のスピーカーの中心ぐらいまでせり出し遮るような格好になっております。 


 天井高と部屋の寸法比


 もう一つ厄介だったのが通常より20センチほど高い天井です。続き間として考えた場合にはそれが生きてくるのですが、スピーカーを置いてある部屋が全体の広さの1/3ほどしかない中では、垂れ壁部分が必然として上下に長く、その分上から覆い被さるような格好となり、天井高が却ってマイナスに働くのです。

 それは前後の音波の動きを上下の空気量が圧迫する形となり、音が間仕切りラインよりも前方へ抜けてくれないのです。これは音楽演奏時においてバックスの音が主旋律をかき消してしまうほど大きくなってはいけないのと同じ理屈です。


 結構違う左右のスピーカーポジション


 両方のスピーカーの音の合成波が部屋全域に渡って循環するようになるには、どこを起点に空気を突き動かせば良いのか手探りで探し出すしかありません。今日に限っては確信のない中で始めるわけですから、冷や汗と脂汗とで一杯です。

 私がクリニックの仕事で一番最初にするのは、ほんの数センチスピーカーを動かしただけで、高価な機材を買い換えた時よりも上回る音を出す事です。

 毛布をお借りし、スピーカーをそっと横に寝かせ、床に傷をつけないように適当な厚みに折った新聞紙をスピーカーの下に入れます。


 バーチカルツイン形スピーカーの使いこなし


 水平方向への音の広がりの関係を見切った上で、先ず最初に行なったのは左右のスピーカーの入れ替えでした。これが今日のクリニックの80%ほどを決めたといって良いでしょう。

 バーチカルツイン形スピーカー最大の長所は、水平ライン上に音がビタッと揃うところにあります。その為には奥行きと広がり面を完璧に再現出来るように調整する必要があります。



 臨機応変なセッティング技術


 易しい方の左チャンネルのスピーカーを滑らすようにして、前後左右そして振り角を調整します。続いて右のスピーカーに移るのですが、いびつな部屋に合わすにはいびつにセッティングするしかありません。

 従って今日の場合は「カイザーウェーブ」から見れば左右のスピーカーの位置はほぼ山と谷の逆相に近い関係になります。

 右側のスピーカーのデリケートな調整の結果、音の淀んだところがなくなり、部屋のどこにいても音楽がスムーズに届くようになりました。思いの他上手く行ったようです。


 スピーカーの足回り


 次に打った手はスピーカーにエコブラス製スパイクを履かせる事だったのですが、こんなにも手こずる事になろうとは予想だにしていませんでした。埋め込んであるメスネジの精度が良くないのでスムーズに入って行かないのです。


 同席していたオーディオ仲間の方が、見るに見かねて、ご自分の会社まで潤滑スプレーを取りに帰ってくれたお陰でなんとか回せるほどになりました。


 クリニック時は左右不揃い状態での試聴が不可欠 


 左側が完成した時点でその音の違いを確認して頂く為に、あえて不揃いな状態で試聴の機会を持ちました。これがこの先耳を肥やすのに有効な手立てなのです。

 もちろんスパイクを受けにはPOINT BASIEを使用しました。混濁感のない明瞭度アップとなった効果を確認頂けたようでしたので、さらに右のスピーカーにも取り掛かりました。

 最初に導き出した場所にはマーキングを施していましたので、スパイクを履かせた後のスピーカー設置にも苦労はありません。

 こうして両チャンネル揃って鳴り始めた音は何倍にも迫力が増します。先ほどの不揃い状態の時には、まさかこんな音が出ようとは百人が百人誰も想像出来ないと思います。

 バッハの無伴奏チェロは最低音まで伸びるようになり、演奏者の表現意図が汲み取り易くなりました。

 良くなればなったで、それと比例するように更なる高い次のテーマもハッキリと見えてくるものです。特に6個あるスピーカーユニットのハーモナイゼーションが私には気になり始めました。


 スピーカーの「加速度組み立て」という技術


 次に試みようとしている「加速度組み立て」という呼称の、ネジのトルクコントロールによる音の向上ぶりには、だれも信じられないといった表情を見せます。

 簡単に言うと楽器のチューニングと同じなわけですが、スピーカー作りというのはそこまでのレベルで行なわれていないのが現実です。

 すなわちスピーカーという工業製品が匠の作る魅力ある音色の楽器に変身すると思って頂ければ良いと思います。バイオリンに限ってはその価値の差が万から億までの開きが存在するわけでして、どこまでのレベルにまで引き上げる事が出来るのかが腕の見せ所です。


 スピーカー、家財道具、部屋が織り成す三位一体効果


 処置後の音はスピーカーが奏でる音というより部屋全体が楽器になったかのような豊かな響きに変身です。この鳴り方の陰には杉で出来たこの部屋の腰板が効いているのです。

 それが豊かな響きの楽器として参加し始めたから出る音なのです。これこそが「カイザーセッティングの三位一体効果」なのです。いつも言っている事ではありますが、システムのグレードの高さや金額の多寡で手に入る音ではありません。


 オーディオラックとテレビの位置調整


 この音世界を構築する上で欠かせないのがオーディオラックの位置調整であります。全てを合わせれば100キロ以上にもなろうかという重量物ですから、部屋の振動の流れに大きく影響します。この前後左右の合わせ込みが重要なのです。大半の機材を一旦棚から出して動かしました。


 もう一つ大きな重量物はスピーカーの真ん中に陣取っているテレビです。ブラウン管に反射する音が良くないといわれ、布で覆うという手法は誰もが採用していますが、それよりも音源とハーモニーする反射パターンに設置する事の方がもっと大切なのです。


 電源タップ「ナイアガラJr.3」の試聴

 スピーカーの足場固めと部屋にある機器の全ての位置決めが決まった後に手をつけたのは電源周りです。20年近く前の電源タップに挿されたACケーブルからは弱々しく力のない音しか出そうもありません。

 そこで登場するのが、当社の一押しである「ナイアガラJr.3」です。ここで「オヤッ?」と思われた方は立派なローゼンクランツ通です。現行商品はType2ですので、Jr.3なる物は存在しないはず!。その通りです!。ただ今新しい次世代内部配線方式のテスト中なんです。  


 クリニック訪問時において、多様なオーディオシステムからデーターを採取中なのです。もう既に10台以上を内々に納めておりますが結果は全て上々です。Type2からのバージョンアップが可能ですので、近々正式にウェブ上で発表する予定です。  

 こうしたトールボーイスピーカーは寸法的に縦方向が極端に長いので、鈍重な低音が特徴ですが小型スピーカーの如く軽やかです。特に音の立ち上がりが良くなりました。 

 その下方へ沈みがちだった音も前方へとせり出してくるような鳴り方にコロッと変わり、さらにもう一つの大きな改善は強弱と緩急の抑揚が素晴らしく良くなりました。


 PIN-Reference1の試聴


 このReference1なるケーブルは、ごく最近三菱電線が開発したD.U.C.C.という特殊技術を用いたもので、通常の銅の結晶と比べると1億倍の大きさを持つハイテクマテリアルです。 その最大の特徴は結晶粒界が極端に少ないため、微弱信号からダイナミックな信号までハイスピードかつ滑らかに機器間伝送が可能となります。


 0.9kaiser(94.5センチ)の長さの物で聴いて頂きます。解像度、エネルギー、静寂感・・・、どれをとっても一気に3ランク上の音になりました。スピーカーの性能がよっぽど良いからこれだけの変わりようなのでしょう。  

 スピーカーケーブルは露出を避け、床下を通す方法を取っています。さらに壁にスピーカーターミナルを取り付け、その先に1メートルほどの長さの別のケーブルで両端ともバナナ端子にて接続してあります。

 ロスの多い分このピンケーブルの試聴は却ってマイナスになるかと思いきや予想とは違って好結果になりました。


 SP-Reference1の試聴


 こんなことになるのであれば、当然スピーカーケーブルも代えてみたくなります。しかし、手持ちには2.7kaiserの長さの物しかなく届きません。臨時にアンプもCDプレーヤーもラックから取り出し、床に直置きにて試聴することにしました。


 相乗効果とはいえ素晴らしい音になり思わずビックリです。どうやらC4をなめていたようです。機器の能力とケーブルの能力にこれほどまでの差が出たのはちょっと珍しい例です。  

 つくづく、「アンプもスピーカーも届けられたケーブル分の音しか出ない!」という事を痛感させられた今回のクリニックでした。  

 最後に無理を承知でそれを数字に表してみれば、スピーカーとアンプの機器の能力の20%しか引き出せていなかったように思います。 

 このように手に取るように具体的に判明した事実はクリニックあってのことですので、この度は特に価値あるクリニックであったと感じました。


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